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ろーどちゅうなの~

246

1-02-06「特変の授業」

あらすじ

「では――祈りの間に」特変を正当にぶん殴るルールを守らずに奇襲してきた一般学生を返り討ちにした特変が思いついた、更なるルールが全体に発表されます。それよりもモーニングコールの場面そのものが大事なシーズン1の7節。

START

H30.4.9

Time

8:45

Stage:NYホール

 ――真理学園の一日は、この時間から始まる。

Face_caro

【キャロ】

――皆さんは、しっかり歯を磨いていますか?

 8時30分が、登校時間。

 正確に云えば、通常登校タイムアップ時間。それ以降は遅刻扱いである。

Face_caro

【キャロ】

歯を磨くことは、とても大事なんですよ。何といっても、歯周病対策の核です

 その後担任は急いでホームルームを仕切る。目標は、5分。

 つまり8時35分を目標に、ホームルームを終わらせて此処に向かうのである。

Face_caro

【キャロ】

よく聞きますよね、歯周病。その割には、結構脅威は理解されていません

Face_caro

【キャロ】

言葉の響きからして、伝わるインパクトが小さいのかもしれません、歯周病

 C等部はC学棟から。 B等部とA等部は一般棟から。 多くの職員は職員棟から。

 皆、8時45分に今を迎えられるよう、NYホールへと集まる。

 毎日、4000人以上がこのホールに集い、その時間に身を預ける。

Face_caro

【キャロ】

しかし、とっても怖い病気です。心臓にだって脅威を届ける存在です、歯周病

 歌い。唱え。聴講し。祈る。

 だいたい10分にも満たないその時間は「朝の礼拝(モーニングコール)」と呼ばれていた。

Face_caro

【キャロ】

ですから、歯はしっかり磨いてくださいねー? 本当に、怖いんですからねー、歯周病

 因みに学生の大半はメインホールに固定設置されたチェアに身体と意識を委ねていた。

 これも紛れない日常の姿であった。

Face_joe

【情】

ごがーZzz

Face_hage

【謙一】

せめて静かに眠ってほしいもんだ……

Face_caro

【キャロ】

……………………

 うっわ主任(シスター)超コッチ見てる……! どうにかしろ、って顔してる!

 無理だって、寝不足のコイツ起こしたら永眠させられるって――!

 涙目のまま宗教主任・愛称キャロさんがを続ける。

Face_caro

【キャロ】

でも、磨きすぎても、良くないんですよ。皆さん、歯ブラシにどれだけ力を込めてますか?

Face_caro

【キャロ】

ゴシゴシゴシ……って、オノマトペが耳で聞こえてきたら、それはもうオーバーランしてます

Face_caro

【キャロ】

いえ、この場合は、オーバーゴシゴシ……? オーバーシャカシャカでもいいですね♪

 この瞬間に2割の聴講者が睡魔に負けた。

Face_caro

【キャロ】

オーバーシャカシャカは、歯に加えて、歯茎まで削ってしまうんです。インプラントを考えたら、寧ろ歯茎が問題です

Face_caro

【キャロ】

歯は、日常を形成する一次的存在です。ですからしっかり護っていかなければなりませんね

Face_caro

【キャロ】

ところで、強く磨こうとする心理は一体どこから来るのでしょうか……?

Face_caro

【キャロ】

それは、健康という面で、歯に注意を向けているというところからではないかと、私は思ったりするのです

Face_caro

【キャロ】

しかしながら、先も示しましたように、オーバーシャカシャカは寧ろ逆効果となってしまいます

Face_caro

【キャロ】

歯に注意を払うという意味が、ここで分離を起こしているのです

 この瞬間にもう2割の聴講者が目を開くのを諦めた。

Face_caro

【キャロ】

何事にも程度があるということでしょう。そしてそれは、中途半端であることを意味しません

Face_caro

【キャロ】

適当という表現にも二面あるように、全く違うにも関わらず、隣り合うように――

Face_so

【奏】

ダメだ――

Face_nagi

【凪】

無理――

 3割もってかれた。

Face_caro

【キャロ】

――教育においても、ある意味その通りなのかもしれません

Face_caro

【キャロ】

真理学園は、各々が心理を発見することのできるよう、その力を養うであることが理想とされてきました

Face_caro

【キャロ】

今年度から、その……とても冒険的な制度が導入されましたが、きっとそこは変わらないのだと信じて

Face_caro

【キャロ】

私自身も、見詰め続けましょう。適当な結果へとちゃくせるように

Face_caro

【キャロ】

……少し早いですが、これで本日の私の話を終わりますね。歯はちゃんと磨いてくださいね

Face_caro

【キャロ】

では――祈りの

 生き残った2割強の者たちが、静かに目を閉じ、各々の暗闇に、言葉を落とす。

 異質とすら思える静寂。呼吸の音すら潜み、空間は飽和し圧迫される。

 その中で――唯一、女の言葉が響く。

Face_caro

【キャロ】

天に座す、我らがお父様。貴方様の涙が、朝の光に照らされた空に満ち輝くようです

Face_caro

【キャロ】

滲むように、ぼやけ、曖昧だと認識する外なき世界であることは、日々のたった一つの動作からも感じられるものです

Face_caro

【キャロ】

その一方で、日々に飽き足らぬ感情が続くこと、喜怒哀楽の我が心が、明瞭たる真実の存在を察するものです

Face_caro

【キャロ】

二面的。多面的な日常が、この日も真理学園の友を包みます。その時――

Face_caro

【キャロ】

最適な解を求め探る意思を友が持つならば、どうかその意思を、友の行く末を見守りくださいませ

Face_caro

【キャロ】

日常の質が大きく変わりつつある真理学園の行く末を、同等に、見守りくださいますよう――

Face_caro

【キャロ】

拙き言葉、願いを、それでも届けましょう。MESSIAHの名によって、これら総てを貴方様への祈りの言葉と変えさせていただきます

Face_caro

【キャロ】

――確かにAMEN

Face_hage

【謙一】

……………………

 緊張感とは、違う。

 凄まじい圧力の一方で、その圧迫に苦しむわけでもない。

 何千人もの人々の、声が、聞こえた。

 その内容は、もう忘れた。だが、確かに充満していた。言葉が。想いが。

 ……真理学園は、M教主義学校。

 世界最大勢力といえる宗派――MESSIAH教の教育を考慮した学校。

 救いを謳い、求める世界。

 皆、何を求めているのだろうか。何から救われようとしているのか。

 意思を、持つのだろうか。このホールに集う人たちの何割が、解を意識しているのだろうか。

 超グダグダな歯ブラシの話を最後まで聴いていた人たちは、この学校で何をしたいのだろうか。

 ……そして、俺は。

 俺たちは、どうしろというのか。

Face_caro

【キャロ】

では、お話を控えている学園長と交代しまーす。ハイターッチ♪

Face_midori

【翠】

いえ~い♪

 あの人はどうしたいのか……!

 人間寝てても話が終わると気付くものである。

 礼拝の時間が終わった途端、睡魔の海に沈められた者たちが帰還してくる。

Face_so

【奏】

ふわ~……ダメだった……今日も負けた~

Face_nagi

【凪】

……翠さんが立ってるわ

Face_so

【奏】

あれ、ホントだ。何かイベント?

Face_fui

【譜已】

き、聞いてないよ? いつも通り、私何も知らされてない……

Face_hage

【謙一】

……イヤな予感がするんだよなー……

 俺たちの意思は、あの人にどこまで支配されているんだろうか。

 自由を大事にする、だから俺にはお金を支払う、と……

 そう俺に直接話したあの人だって、あの人自身の自由を大事にしている筈だ。

 だったらあの人は、きっと……俺の直感通りなら――

 どこまでも、意思のままに動くのだろう。

Face_midori

【翠】

は~い、先月歯科検診に行ってみたら、健康すぎて褒められた学園長で~す♪

Face_midori

【翠】

譜已ちゃん、いつもありがとね~! ぶちゅ~(←投げキッス)

Face_fui

【譜已】

……………………(←赤面)

Face_hage

【謙一】

一瞬で娘の心抉ったぞオイ! お母さんモード仕舞えよ!?

Face_so

【奏】

いやでも、いつも通りだし

Face_hage

【謙一】

マジか

 ……確かに皆、反応が薄い。俺とか「歯磨き娘に手伝わせてんのかよ!」とか叫びそうになったのに。

 つまり学園長が立った時、譜已ちゃんは可成りの頻度でこういう目に遭ってるってことか……

Face_hage

【謙一】

でも、それはつまり譜已ちゃんへの嫌がらせは前菜みたいなものだということ

 何か、俺たち全員に伝達すべき情報があるってことだろう。

Face_midori

【翠】

本当ならこのまま1時限目まで昨晩の譜已ちゃんについて熱弁したかったのだけど、啓史さんに怒られちゃうから、ちゃんとお話するわね

Face_midori

【翠】

皆がキャロちゃんのお話でおねんねしてる間に、教室にこの紙を配っておいたの~

Face_hage

【謙一】

ん……?

 翠は壇上から、左手に持った紙を高くあげた。

 思いっきり中折れて内容は全く見えないが、それもどうでもよいことである。

 後で教室で読めばよいことでなく、その内容の解釈を学園側が指摘するのである。

Face_midori

【翠】

皆の中には、もしかしたらまだ、特変という存在は夢のように思ってる子もいるかもしれないわね~

Face_midori

【翠】

でも……存在するのよ?

Face_midori

【翠】

特変という権力は、現実として存在することを、教室で確かめなさいな

Face_hage

【謙一】

……ああ……そういうことか

Face_so

【奏】

パイセン? 何か分かったんすか?

Face_hage

【謙一】

昨日のことを報告してるんだよ

Face_so

【奏】

ああ……なるほど。流石翠さん、躊躇無くエグいことを

Face_midori

【翠】

昨日特変を潰そうとしてくれた同盟の皆、私からは敢えてお礼を云っておくわね~。ありがとう~

Face_midori

【翠】

特変破りに則ってくれなかったのが、好転して良いことになったわ~

Face_midori

【翠】

さあ……もっと、皆特変破りに勤しんでね~? 奪われっぱなしはイヤでしょ~

Face_so

【奏】

……うわ~……

Face_hage

【謙一】

ホントに教育者なのかなーって娘の前で疑問を声に出してみる

Face_fui

【譜已】

ごめんなさい……ごめんなさい……皆ごめんなさい……

 目を閉じていても何千もの怨嗟が9人に向けられているのが分かる。

 事態を理解していないのは、関与していないC等部のキッズと、未だ爆睡してる特変面子だけだった。

Face_joe

【情】

ごがー

Face_shiho

【志穂】

ぶおぉおおおおおお

Face_mikan

【美甘】

(うるせえ……いびき半端なくうるせえ……)

Face_nono

【乃乃】

謙一さん、どうやら私、学園長的にもお手柄なことやったみたいです

Face_hage

【謙一】

昨日と始業式以外で事件とか特に無かったからなぁ……

Face_hage

【謙一】

学園長は、もっと特変おれたちがアクションを起こすのを期待してるっぽいな

Face_saya

【沙綾】

アクションって?

Face_hage

【謙一】

具体的なところは分からん。でも、俺たちが制度通りに目立っていくには、やっぱり格差が目立つ必要がある

Face_hage

【謙一】

だから俺たちが何か権力を使ったり、外クラスを返り討ちにするようなイベントには価値があるってことなんだろう

 俺にはマイナスな意義ばっかだけどな。

Face_saya

【沙綾】

昨日は奏一人で圧勝しちゃったり、法を改造したり、つまりどっちのイベントもやっちゃったわけね

Face_saya

【沙綾】

あららー怖いわねー。これからどうなっちゃうのかしらー

Face_hage

【謙一】

あらー何て他人事なのかしらこの人ー

Face_nono

【乃乃】

沙綾さんは兎も角、渦中オブ渦中な謙一さんが他人事なのはあり得ないかと

Face_hage

【謙一】

云うんじゃねえ畜生め

 そしてここから……学園長の思惑通りの礼拝後より、生活は一変することを謙一らも知ることとなる。

SKIP

Stage:特変教室

Time

9:00

Face_yomitate

【訓舘】

訓舘嬰太です

Face_hage

【謙一】

あ、はい……

 …………。

 …………。

 …………。

Face_hage

【謙一】

……え!? 何この空気!?

 何をどうしたらいいの!?

Face_joe

【情】

ぐぉー……

Face_shiho

【志穂】

すぴぃいいいい

Face_saya

【沙綾】

この二人はまだ寝足りないようねぇ

Face_mikan

【美甘】

(初授業普通寝るか?)

Face_yomitate

【訓舘】

なるほどなるほど、コレが特変ですか……ふむふむ

Face_hage

【謙一】

え、何すか、何分析してるんですか……?

Face_yomitate

【訓舘】

いえ、何も考えてませんが

Face_hage

【謙一】

ふむふむとか云ってましたよね!?

Face_yomitate

【訓舘】

云いたかっただけです

Face_hage

【謙一】

……………………

 何だろうな、真理学園の教師も変な人多いのかな。

 考えてみればトップがあの裸エプロンだからな。

Face_yomitate

【訓舘】

では井澤くん、私はどうすればよいでしょう

Face_hage

【謙一】

え、俺? 何で? 先生が勝手に進行してくれれば、俺ら附いて行きますよ?

Face_yomitate

【訓舘】

これは私の直感と昨年度を省みての意見ですが、ソレでは即座に環境崩壊しないかなと

Face_hage

【謙一】

……………………

 謙一は何となく情の方向を向いた。

Face_joe

【情】

……あ?

 起きてた。

Face_hage

【謙一】

……俺に一体何を求めてるんですか先生は

Face_yomitate

【訓舘】

私は何も求めていませんよ。ただ、貴方の言葉には耳を傾けるというだけのことです

Face_hage

【謙一】

……じゃあ、取りあえず自己紹介を

Face_yomitate

【訓舘】

皆さんの?

Face_joe

【情】

つまらん

Face_saya

【沙綾】

パース

Face_nono

【乃乃】

自己紹介するとなれば、私はまた落とし穴を作らねば

Face_hage

【謙一】

すいませんけど先生だけお願いします

 そろそろ空か穴かに叫びたくなってきたよ亜弥。

Face_yomitate

【訓舘】

先ほど名前は示しましたが、訓舘嬰太と申します。今年度は大して実績を持たないにもかかわらず特変授業主任に赴任しました故、皆さんと最も関わる教員の一人となりましょう

Face_yomitate

【訓舘】

担当教科は文学、数学、理科、芸術ですね。ご承知おきを

Face_hage

【謙一】

めっちゃ担当してるじゃないすか

Face_saya

【沙綾】

C等部的ね。教科担任制じゃなくて。まぁ、去年を考えるに特変と関わりたい教師も居ないでしょうから、その方が学園的には好都合なのかしら

Face_yomitate

【訓舘】

しかしながら一般的なC等部とも異なる調子で授業は過ごそうと思うのです

Face_hage

【謙一】

と、いいますと?

Face_yomitate

【訓舘】

私は特に授業の指示をしません

Face_hage

【謙一】

ふぁっ!?

 そこまで自由にしちゃうの!?

 何この人、にこにこしながら革命派!? 何云ってんだろ俺も!?

Face_joe

【情】

……ほう

Face_yomitate

【訓舘】

一方的な講義は、このクラスには向かないでしょう。これも私の直感でしかありませんが

Face_yomitate

【訓舘】

であれば、好きなようにさせた方が皆さんも私も楽できる、ということです

Face_hage

【謙一】

俺の負担激増しますけどね!!!

 コイツら野放しとかヤバいでしょ!

Face_so

【奏】

ひゃっほう、遊び放題だー!

 ホラもうこんな事云い出す始末!!

Face_fui

【譜已】

え……えぇぇぇぇぇぇぇ……

Face_yomitate

【訓舘】

まぁ、私のスタンスはそういうわけですので、後はクラスリーダーたる井澤くんにお任せします

Face_hage

【謙一】

うわあぁあああああああ……

 えげつないプレッシャー、一寸先は闇、綱渡り……これらの言葉が一斉に身に染みた謙一だった。

Face_mikan

【美甘】

………………

 総てを委ねられた、ただの男子生徒。

 その哀れとも云うべき横顔を、こっそり美甘は見詰めていた。

Face_saya

【沙綾】

…………

Face_nono

【乃乃】

…………

Face_joe

【情】

…………

 というか志穂以外の面子が、謙一に注目していた。

 学校生活の半分くらいは授業でできている。つまり、今彼が下す判断は特変の生活の半分を方向付けるもの。

Face_yomitate

【訓舘】

さあ、どうしますか? 井澤くん

 謙一はそのことも理解していた。そこに存在するも読み取っていた。

 つまり……俺は皆に、測られてるわけだ。特変を管理する者としての器かを……

 唐突に来たな、瀬戸際……逃れようもない、試練。衒火も起きてやがるし。

 特変の授業を……どうしたいか、か。

 俺は、皆のことをまだ、全然知らない。皆がどうしたいのかも知ってるわけない。特変に求められる授業の在り方なんて、その状態で導けるわけがない。

 …………ただ。

 それでも、俺は――

Face_hage

【謙一】

……やりますよ

Face_yomitate

【訓舘】

何をですか?

Face_hage

【謙一】

授業に決まってるでしょ。やるんです授業を

 ――そう答えた。

Face_so

【奏】

えーーーー!!!?

 まず反応したのは奏だった。見ての通り残念そうである。

Face_so

【奏】

何でーー! 井澤パイセン、その見た目で勉強好きなの!?

Face_hage

【謙一】

見た目関係ねえだろ。てかそんな遊んでそうに見える?

Face_shiho

【志穂】

遊んでるというよりだらけてそうだな

Face_hage

【謙一】

秋山起きてたのか

Face_shiho

【志穂】

何か、頭にぶつかってきた気がしてなー……あー眠

Face_mikan

【美甘】

…………(←消しゴム投げた犯人)

Face_hage

【謙一】

確かに俺は面倒くさがり屋ではあるが……

 それは相当な贅沢であることを知っている。

 知りたくとも、授業を受けたくとも、学校へ行きたくとも、それが叶わない人が居ることを知っている。

 俺は、学び続けなければならない。

 亜弥の兄さんとして、亜弥が兄さんを必要としなくなる時まで……

Face_hage

【謙一】

いいじゃねえか別に。暇を持て余すよりは有意義にしようぜ

Face_hage

【謙一】

折角フリーダムに授業時間を使えるんだ。授業やろうぜ

Face_joe

【情】

――その時間に意味があるのかよ

 衒火情が反応をした途端、教室の空気が急激に下がった感覚を謙一は抱いた。

 即座に謙一は応えた。

Face_hage

【謙一】

俺はただの学生だぜ? んな哲学いきなりぶっ込んでくんなよ

Face_saya

【沙綾】

逃げたわね

Face_hage

【謙一】

授業をやるってのも、少なくとも一年間の方針を1分で思いついた方針だ。流石にコレをそのまま決定事項にするのも、奏みたいに不満が残ろう

Face_so

【奏】

ブーーブーー!!

Face_nagi

【凪】

子豚が居るわね

Face_so

【奏】

あ゙?

Face_fui

【譜已】

そ、奏ちゃん抑えて抑えて……

Face_hage

【謙一】

だから、せめて一週間ぐらいは考えさせろ。特変という枠自体もいまいち実感できてねえんだ、時間をくれ

Face_joe

【情】

結局テメエは何を――

Face_hage

【謙一】

だが一つ

 情の言葉を遮り、謙一は教室を、整列のなってない8つの机とその所有者を見渡し、続けた。

Face_hage

【謙一】

一つ云えることは、学びも意味も、在るんじゃねえ

Face_hage

【謙一】

自分で創っていくもんだろ

Face_so

【奏】

…………

Face_fui

【譜已】

…………

Face_nagi

【凪】

…………

Face_mikan

【美甘】

…………

Face_nono

【乃乃】

…………

Face_hage

【謙一】

俺は、これが真実だと確信してる。どうしてもそうは思えないって奴は……

Face_hage

【謙一】

悪いけど、管理者と最高に相性悪いってことで、我慢してくれ

Face_shiho

【志穂】

……オーケー

 そこから即行で反応したのは秋山志穂であった。

Face_shiho

【志穂】

オメーの方針に従う。取りあえず一週間も待ってやる

Face_mikan

【美甘】

……!

Face_saya

【沙綾】

あら、随分と判断早いのねぇ前任者・・・さん

Face_shiho

【志穂】

どっちでもいーだろ、合わなきゃ寝てればいーんだよ

Face_hage

【謙一】

いや、お前ホント寝過ぎだと思うんだけど……衒火より寝てるよね日中

Face_shiho

【志穂】

だったら退屈させんなー。私を寝させない授業運営しろー

Face_shiho

【志穂】

……ま、今の教育哲学に則るなら、私も運営者の一人になるわけだが

Face_joe

【情】

それどころかこの場の全員が授業を創る側に立つわけか

Face_saya

【沙綾】

……衒火くん?

 その次に反応したのが、情であった。

Face_joe

【情】

一週間だ。一週間で決めろ。延ばしは認めねえ

Face_hage

【謙一】

お前は俺の方針に従うわけ?

Face_joe

【情】

それを決めるのも一週間後だ

Face_hage

【謙一】

なるほどね

 取りあえず首の皮一枚繋げた感じってことでいいのね。

Face_so

【奏】

ま、まじ? 衒火パイセンがソッチに附くの?

Face_nono

【乃乃】

正確には一週間後、という点で同意したに過ぎませんよ。因みに私もソレで

Face_saya

【沙綾】

同じく

Face_nagi

【凪】

落としどころね

 続いて乃乃、沙綾、凪が情同様の反応をする。

Face_joe

【情】

群がんじゃねえよ

Face_nono

【乃乃】

情さんの考え方と偶然一致しただけです。まぁ触発された感じも否めませんが

Face_saya

【沙綾】

私巻かれるタイプだから

Face_fui

【譜已】

じゃあ、私も……

Face_so

【奏】

譜已ちゃん!?

Face_fui

【譜已】

井澤先輩を……信じたい、です

Face_hage

【謙一】

ありがとう

Face_so

【奏】

……堀田パイセンは?

Face_mikan

【美甘】

…………

 「勝手にしろ」という旨の視線を謙一は受け取った。

Face_hage

【謙一】

あとはお前だけだな

Face_so

【奏】

ぐぐぐぐ……井澤パイセンの云う、相性悪いタイプかもしれない……!

Face_hage

【謙一】

そんな勉強嫌いなのお前?

Face_so

【奏】

興味無いんだよー割り算とかー九九とかー

Face_hage

【謙一】

ちょっと待て、それB等部のレベルですらないぞ

Face_fui

【譜已】

えっと……奏ちゃん、数学苦手で……凄く苦手で……

Face_hage

【謙一】

よし、満場一致で一週間様子みまーす!

 取りあえずの方針が確定した。

Face_so

【奏】

ってえーーーー!?!? 私だけ強行無視!?

Face_hage

【謙一】

お前、ソレは日常生活に支障あるレベルだからな! 最低限は計算できるようになれよ!?

Face_so

【奏】

皆そう云う……譜已ちゃんですら私の計算力には般若の顔だよ……

 譜已ちゃんの般若顔とか凄えな。ちょっと見てみたい。

Face_hage

【謙一】

お前の日常の質を向上させるためだ。皆で奏の勉強をみます

Face_nagi

【凪】

それが一番無駄な時間だと思うの

Face_fui

【譜已】

ま、まあまあ……

Face_saya

【沙綾】

さて、ここで一つ問題を取り上げましょう井澤くん

Face_hage

【謙一】

ん?

Face_saya

【沙綾】

今数学の話題が出たし、そもそも今数学の時間なわけだから、無視しちゃいけないわよね

Face_saya

【沙綾】

一週間後どうなってるのかは分からないけど……数学の時間に数学を勉強する場合、このクラスだと困難よ

Face_hage

【謙一】

ああ……そうだな、確かに云われてみれば

Face_saya

【沙綾】

貸し一つね☆

Face_hage

【謙一】

今ので!?

 コイツに貸しとか作りたくねえ……

Face_so

【奏】

えっと、どういうこと?

Face_hage

【謙一】

つまりだ、こうして俺らは現在A等部第2学年に括られてるわけだが、本来なら二邑牙と譜已ちゃんは今第1学年だったわけだ

Face_hage

【謙一】

学力的な意味で、学年差という溝があるんだよ俺たちには

Face_so

【奏】

あー……本当だ。そういえば私たち飛び級したんだった

Face_fui

【譜已】

実力、無いのに飛び級しちゃった……

Face_hage

【謙一】

その辺も、一週間で見させてもらおうと思う。てか、本来だったら皆学年どうなってたんだ?

Face_saya

【沙綾】

私と堀田さんと衒火くんと烏丸さん、ついでに秋山さんは貴方と同じ。支障無い組ね

Face_shiho

【志穂】

オイ何で今私ついで扱いされたんだゴラ

Face_saya

【沙綾】

だって貴方井澤くんの次に特殊枠じゃない。ああでも、衒火くんって多分もうちょい上の年齢よね

Face_joe

【情】

……正確なとこは俺も知らん。どうでもいい

 ……あまりその辺は突っ込まない方がいいんだろうな。

Face_saya

【沙綾】

で、佐伯さんは3年、だったのかしら?

Face_nono

【乃乃】

……色々ありまして、まぁ端的に云えば留年みたいなものです

Face_nono

【乃乃】

落ち零れですから、気兼ねなく接してくだされば

Face_hage

【謙一】

逆に気を遣う云い方すんなし

 結果として2年であることは変わらないってことだろうか。よく分からんが、一番複雑な身分なのかもしれない。

 ……そんな細かいことを気にする必要無いとも、核爆弾なんて呼ばれてる日常から思わされるが。

 兎も角、学年差については大体把握した。じゃあ、残った時間を使って……

Face_hage

【謙一】

先生、数学関係の教材とか何か持ってきてます? 持ってきてますよね?

Face_yomitate

【訓舘】

一応B等部レベルの数学の標準問題集を持ってきてはいますが

Face_hage

【謙一】

一冊だけか……特にプリント無しっと

 ホントこの人、スケジュール管理とか大丈夫なのか……?

 まあいいや。取りあえず……うーん……

 パラパラと軽く問題集全体を流し見る謙一。

Face_shiho

【志穂】

ん……

 ……何つーか、手つき慣れてんなアイツ。

Face_hage

【謙一】

……よし。じゃあ残りの時間で軽く学力検査と行こうじゃねえか

Face_so

【奏】

は!? 結局やるの!?

Face_hage

【謙一】

お前は必修だー。そうだな……10問、今から黒板に書き写す。各自ノートか何かに解答してくれ

Face_saya

【沙綾】

スマホで問題文スキャンして、まとめてに載せた方が効率良いわよ?

Face_hage

【謙一】

悪い、俺スマホ持ってねえんだ

Face_saya

【沙綾】

………………………。
…………………………。
…………――はあぁああっ!?

Face_hage

【謙一】

俺お前がそんな大声出すの初めて聞いたかもしれない

Face_saya

【沙綾】

う、嘘でしょ、現代人でしょ? 携帯ぐらい持ってるでしょ……?

Face_hage

【謙一】

逆に皆、持ってるのやっぱり?

Face_fui

【譜已】

そ、それは……

Face_so

【奏】

当然というか……

Face_nono

【乃乃】

逆に無いと就職とかできませんよね

Face_joe

【情】

ごくたまに見かけるぞ。テメエみたいな原始人

Face_hage

【謙一】

原始人呼ばわりですかそうですか

 仕方ねえだろ持てないんだから。

Face_shiho

【志穂】

…………

Face_hage

【謙一】

ま、そういうことだから原始人らしく黒板にチョークでいくからなー

 謙一は黒板を縦3段分けにして3,4,3の配当で問題文を書いた。

 丁寧、且つ快速で白いチョークの文字列が完成した。

Face_saya

【沙綾】

はっや……

Face_hage

【謙一】

因みにだが皆さん、流石に筆記具とノートはあるよな?

Face_nono

【乃乃】

謙一さん、すみません、手元にロウソクとガスバーナーとネズミ花火しかありません

Face_hage

【謙一】

ホント何しに来たんだ

 そこにマッチが揃ってたら今頃阿鼻叫喚な理科の実験が起きてたかもしれない。

Face_shiho

【志穂】

ぶっちゃけノート使うの勿体ないんだが

Face_hage

【謙一】

授業で使わずいつ使うんだよ

Face_shiho

【志穂】

訓舘さんの授業以外は講義形式かもしんねえだろ。んで、授業ノート提出とかあったり

Face_shiho

【志穂】

そこで使えばいい。こんなとこで無駄に一冊使う、てかペン使うのは非効率過ぎだろが

Face_hage

【謙一】

これも歴とした授業なんだが。無駄じゃねえ。途中式メモるのに必要だろうが

Face_shiho

【志穂】

は? それこそ要らねえだろ

Face_hage

【謙一】

え?

Face_shiho

【志穂】

え?

 ……………………。

 ~ 十数分後 ~

Face_hage

【謙一】

さて……答案回収しましたが……

 ちなみに前提事項として、この十問は決して無作為に抽出されたものではない。

 謙一の感覚的に、大輪B等部標準数学でエッセンスが詰められていると思われてる中心テーマ――「関数」と「図形」をそれぞれ5問、難易度も上昇していくように選び抜いたのである。

 標準問題集にも応用レベルの問題は割と掲載されている。抽出された中では各テーマ5問目がソレである。よって最低限必要な数値的学力というのを標準レベルと設定した謙一が望むのは、その2問以外が解けていること。

 そして結果は、次のようであった――

Face_hage

【謙一】

二邑牙と堀田酷い!!!

Face_so

【奏】

わざわざ云わなくてもいいじゃん!!?

Face_nagi

【凪】

確かに、分かりきっていたことを口にするのは無駄というほかないわね

Face_so

【奏】

そういう意味じゃなくて……!! いきなりの公開処刑は辛いものがあるしー!!

 確かに二邑牙は分かりきっていた。九九で躓いてるんだから関数全滅は正直予想できていた。図形はまだマシなのか、2問撃破している。とはいえお世辞が裸足で逃走するレベルなのは変わらない。

 一方の堀田は、関数図形共に2問……まだマシなんじゃないかと思うか? ところが解答用紙を見たら話は変わってくる。

 ハッキリ云って、この痕跡は手付かず……即ち考える土台を持っていない状態。二邑牙の用紙には足掻いた痕跡があったが、それが堀田には無い。恐らく知識が頭に入ってない。

 二邑牙は1年として、堀田は2年として、ヤバス!! という結果だった。

Face_mikan

【美甘】

…………(←落ち込んでる)

Face_hage

【謙一】

…………

 二邑牙はまだ教えられると思うが、堀田はそもそもロンリーマッチョウルフでコミュニケーションができない状態。

 初接触の頃を思い出すと、とりつく島がないわけじゃないが……大きい壁を見つけちまったなぁ……

Face_so

【奏】

てか、他の人は!? 佐伯パイセンとか留年なんだよね!?

Face_hage

【謙一】

仲間見つけようとすんなよ。まぁ平等を重んじてここは全員公開するとしよう

Face_hage

【謙一】

二邑牙は2正解。堀田は4正解。お前らガチで補習確定

Face_so

【奏】

何でこの人こんなに熱いのー……!?

Face_hage

【謙一】

譜已ちゃんは6正解。及第点だから大丈夫だ

Face_fui

【譜已】

ふ、ふう……

Face_hage

【謙一】

んで……

Face_hage

【謙一】

衒火、烏丸、遠嶋、秋山――満点

 しかも秋山に至っては、本当に紙とインク無駄遣いしたくないと折れなかったので開始20秒で俺に耳打ち口頭で全部答えてしまった。途中式とかスキップしまくってた。

 たまに居るんだよな、こういうバケモノが……

Face_hage

【謙一】

ちなみにだが、佐伯も満点だ

Face_so

【奏】

は……はあぁあああああああああ!?!?!?

Face_nono

【乃乃】

巫山戯るべきでしたかね

Face_hage

【謙一】

寧ろずっとこの解答用紙のように真面目に生活しててほしいんだがいやホント……

 正直俺も驚いた。留年組だしいっつも罰ゲーム道具弄ってるし、勉強してないから留年でもしたのかな、とか思ってたが……

 シャーペンで刻まれた解答が物語る、安定性。偶然でなく、確実に解答する力を佐伯は持っている。恐らくは、中央大陸の大学附属の学校も狙えただろう力を……

Face_so

【奏】

そ、そうだ! そもそもパイセンは!? 偉そうに指揮ってる井澤パイセンは如何な学力!?

Face_fui

【譜已】

確か、ここの編入試験の筆記試験満点だったってお母さんが……

Face_so

【奏】

えぇえええ秀才ばっかこのクラス……

Face_saya

【沙綾】

偏差値考えたら、真理学園の秀才クラスとかあんま響き良くないわよねぇ

Face_hage

【謙一】

正直俺さ、お前らどこまで解けるのか限界見てみたいんだけど、いい?(←楽しくなってきた人)

Face_so

【奏】

やめてッ!! 格差を見せつけないで!! お慈悲をー!

Face_hage

【謙一】

努力する奴にしか慈悲は降らないぞ

Face_so

【奏】

何て冷酷な目!! これが資本主義で育った若者の実態か!!

Face_fui

【譜已】

年齢的に私たちの方が若者だよ……?

Face_yomitate

【訓舘】

ふふっ……そろそろ時間ですね

Face_hage

【謙一】

……あ、ホントだ

 あと一分でチャイム鳴る。

Face_yomitate

【訓舘】

では、コレで終わりとしましょう。ひとまず、一週間、頑張ってくださいね

Face_yomitate

【訓舘】

といってもこの後すぐにまた会うでしょうが

Face_hage

【謙一】

主要教科殆ど持ってるもんなぁ……

Face_hage

【謙一】

あ、じゃあ前もって云っておきますけど、主要科目は全部確認テストと補習でいくつもりです

Face_yomitate

【訓舘】

なるほど、承知しました。では、私の方で適当に問題集を持ってきましょう

Face_so

【奏】

も……

Face_so

【奏】

もうやだよおぉおおおおおおおお――!!!!