
START
H30.4.6
Time
14:00

【謙一】
委員会を決めたいと思います!!
~ ☆ 5分後 ☆ ~

【謙一】
決まらねえ……
この日も早々に心が折れかけている謙一だった。
Stage:特変教室

【奏】
絶対やりたくないでーす!

【情】
ごがー……Zzz

【凪】
眠いわ……

【謙一】
おいコラ烏丸、お前まで寝入る姿勢入るな

【乃乃】
私には無縁の話ですねー

【沙綾】
同じく。かーくんと雌牛ならともかくねぇ

【謙一】
何無関係顔貼ってんだピカピカの一年生ども

【謙一】
ここは、もっとフレッシュに積極的にだな……ほら、よく云うじゃん? 自分を変える季節っていうかさ……

【謙一】
新年度ということで気分一新して新しいことに挑戦してみるとか……

【沙綾】
因みにだけど、そんなボロ雑巾レベルで陳腐なことを云っちゃう井澤謙一くん

【謙一】
な、何だよ……

【沙綾】
ほんとーに……そう思ってる?

【沙綾】
具体的には、私たちをソレで納得させられるって思ってる?

【謙一】
……そんなの。考えるまでもねえよ

【沙綾】
うん

【謙一】
できるわけねえだろ! 俺でも動かねえよこんなザラザラな啓発!!
謙一は教卓に立ったまま突っ伏した。寝てしまいたいのはコッチだと云わんばかりに。
しかし誰も彼の苦労など興味無いのである。

【沙綾】
井澤くん、嘘つけない性格でしょ。言葉が真っ直ぐというか、取りあえず嘘なのか嘘じゃないのかは割とすぐ分かっちゃう

【謙一】
……そんなに俺は説得力の無い誘導をしてたのか

【沙綾】
駅の改札周りでボロボロの格好して難民になりすまして募金を迫る知能低めの悪女より見え見えよねー

【謙一】
マジか
マジか……

【凪】
この前どこぞのゆでだこは見事にお金を払っていたけれど

【奏】
……え!? あ、アレ、ガチ詐欺だったの!? マジ!?

【譜已】
奏ちゃん……(悲哀)

【凪】
というか、その直後に偶然現場を見てた女の人に貴方怒られてたでしょう

【凪】
会話は聞こえなかったけど、おおよそ内容は、アレは詐欺なんですよ、といったところかしら

【奏】
てかそこまで現場マジマジと見てたならあの時の私を止めてよ!!?

【凪】
視界に入るだけならまだしも、どうして態々貴方ごときの為に私が動かなきゃいけないの

【謙一】
そんな二邑牙くんにはいつまでも清らかで純白――ぶほッ……な心で、いてほしいからさ……

【謙一】
そうだな……ここは、美化委員なんてどうだろう! 充実した一年を過ごそうぜ!

【奏】
引っかからないよ! ホントに心ないことを、ってか途中で吹き出すなー!!

【凪】
折角ここまでお膳立てしてあげたというのに、貴方は本当に翠さんに認められた器なの?

【謙一】
すまない烏丸、けどこんな俺でも一応文脈を読むのは得意なんだぜ
少なくともお前は他人の為に働く女子じゃねえだろ、ってこととかな。
こんな感じで新学期の定番・委員会決め(※擦り付け合い)は難航していた。

【謙一】
というかだな、俺は君らとは違ってそもそも新参者なんだ

【謙一】
俺は委員会って聞くと一般の学校の姿をイメージしちゃうわけだが、どうせそうじゃないんだろ?

【奏】
あぁ、そういえば井澤パイセンは真理学園初心者だったねー
一応この学校のシステムというか、暮らし方というか、そういうのは学園長に教えてもらった。
但し、教えたのは大事な部分まで笑顔で省略する学園長なので、ぶっちゃけ理解できてない。
こんな中途半端な事前知識を振りかざして、生活に溶け込んでる経験者を騙せるわけがないのだ。

【謙一】
悪いがこれからは、初心者から抜け出すまでは真理学園のこと適宜解説してくれ

【謙一】
してくれないとお前の目と鼻の先で思いっきり鼻をかんでやる

【奏】
え、何ソレ微妙に最悪!? しかも私オンリー!?
クラス同じとはいえ、後輩。しかもバカ。
こん中で一番利用できる奴といったらぶっちぎりでお前だろ。

【謙一】
できれば譜已ちゃんとかも、付き合ってくれると嬉しい

【譜已】
わ、分かりました……私で説明できることがあれば

【奏】
グググ……極めつけに譜已ちゃんを籠絡するだなんて……!!

【奏】
分かりましたー! ここはこの優しい後輩たちが初心者鬼畜頭皮パイセンにずっぷんずっぽんレクチャーしてあげますよーだ!

【謙一】
マジで助かる
でもずっぽんずっぽんはないわ。あと鬼畜頭皮って何?

【奏】
んじゃあ、まずは委員会って概念から説明しましょー!

【奏】
抑もなところ、委員会って云い方は真理学園じゃ堅すぎるよね

【謙一】
は? 何で? 委員会だろ?

【奏】
まぁそうなんだけど……あーややこしい。私たちは逆に真理学園以外の文化、あんま知らないからなー

【譜已】
えっと、多分、真理学園でしか使われてない表現なんですけど……

【譜已】
クローズ、とも私たちは呼んでます

【謙一】
……クローズ?
何で妙にカッコいいことになってんだ委員会。

【奏】
そそ。そんでもってそのクローズの性質ってのも、どうせ真理学園オンリーな文化なんだろーね譜已ちゃん

【譜已】
うん……ちょっとだけ、お母さんから話を聴いたことがある

【譜已】
一般的といえる学校の委員会は、全員が入るわけじゃないんだって

【奏】
そこんところどうなの?

【謙一】
逆に、委員会って全員入るもんなの?
鮮明なカルチャーショックが静かにかつ雷鳴の如き速度で以て二人の間を激走した。

【譜已】
真理学園では、全員が何かしらの委員会に所属することになるんです

【譜已】
C等部の時は、殆ど遊びの延長でしたけど、B等部からは仕事って感じがします

【沙綾】
つまり面倒いのよね

【乃乃】
仕事を回避する方法は、あるといえばあるんですけどね

【謙一】
回避? 委員会に入らないといけないのに?

【乃乃】
その説明は便宜上、後に回した方がいいです。横入り失礼しました、譜已さん

【譜已】
だ、大丈夫です、佐伯先輩……

【謙一】
堅いなぁ譜已ちゃん……
こんな畜生に先輩って付けなくて良いと思うんだ。
……でもタメな譜已ちゃんは見たくないな……

【謙一】
っと、危うくまた脱線するとこだった

【奏】
何が?

【謙一】
何でもない。続けてくれ

【奏】
えっと……どこまで話したっけ?

【譜已】
取りあえず、全員が委員会に所属して、仕事を持つ……のが基本的かな、と

【謙一】
なるほどな……んで、その委員会の種類ってのが――

【謙一】
コイツらなんだな。もう、一つ一つ説明してもらっていいか?
どうせ全部俺の予想とは違うんだろうからさ。

【奏】
仕方無いなぁー……でも、考えたら私たち、ABver.のクローズ、2年間しか経験してないんだよね

【奏】
おまけに私はサボり組一択だから、あんまり仕事内容とか分からないかも👍

【謙一】
予想よりだいぶ早く使い物にならなくなったな。譜已ちゃんは?

【譜已】
わ、私も、ちょっと別の用事があって……だからそれ以外、やったことないです……

【謙一】
そっか、それなら仕方無いな!

【奏】
この扱いの差どう思うよ烏丸パイセーン!

【凪】
……? 何かおかしいところでもあったかしら

【奏】
井澤パイセーン、貸してくださーいこの女の眼鏡焼き消します

【謙一】
眼鏡どころか教室一帯焼き消えかねない兵器常備してるわけねえだろ

【謙一】
ところで烏丸は何かやったことはないのか?
いや、全員入るんだから確実にやってるんだけど。

【凪】
雑務一択

【沙綾&乃乃】
「「ですよねー」」

【譜已】
あ、あはは……

【謙一】
……?

【沙綾】
何かこのままだといつまでも話終わらなくて帰れなくなりそうだから、助太刀してあげる

【謙一】
お
気まぐれ猫が動き出した。
具体的には、謙一らの立っている黒板前まで移動してきた。

【謙一】
遠嶋は経験豊富なのか委員会?

【沙綾】
は?

【謙一】
……悪かった
やるわけねえわなコイツが……。やる気が無きゃ意地でも動かなそうなのは文脈から察してるのである。
その分、助太刀してくれるのはラッキーと思わなきゃいけないのだろう。

【沙綾】
ま、やるつもりは毛頭無いけど、情報だけは仕入れてるのよー

【沙綾】
上から順に……

【沙綾】
福祉は露骨に助け合いをアピールするところねー。あー鳥肌鳥肌

【謙一】
Bの頃は重量級エコキャップ推進フェスティバルとかやったな。アレは良い青春だった……

【沙綾】
そんな謎に熱そうな感じじゃないけど、エコキャップ回収的なびはたまにあるわねー

【沙綾】
学内だとあんまり目立たないところ。学外ではなかなか手堅い評判持ってるけど

【謙一】
……学外?

【沙綾】
優海町にとって真理学園は街の象徴。だから私たちも付き合わざるをえないの

【沙綾】
委員会の仕事っていうと、やっぱり優海町の彼方此方で業務、が醍醐味なんじゃない?

【奏】
まーそんな感じの風潮だよねー

【謙一】
つまり、この学校での委員会は学外での活動が当たり前になってるってことか
……凄えアクティブなんだけど!

【沙綾】
学外では病院とか、まぁそっち系の施設に出張ね。何やってるのかまでは飽きて調べてない

【沙綾】
美化は、まぁ一言で云ってお掃除ね

【謙一】
ん、もしかして放課後のお掃除タイムとか、強制じゃない系?

【沙綾】
何で私が掃除しなきゃいけないのよ系
マジか! 超楽じゃん!!
まぁ俺はどうせ楽じゃない生活だけどね!!

【沙綾】
学内では校舎の状況をざっとチェック。放課後にチェック内容に従って清掃活動

【沙綾】
学外でもそんな感じねー。ホント、何が楽しいのかしら

【奏】
多分、一番人口多いですよねー遠嶋パイセン

【沙綾】
上限は例年100人くらいに設定してたわねー。学園もそれくらい無理矢理集めてるし

【謙一】
まぁ、街規模となると結構人必要になるよな。とかゴミ拾いしてそう

【沙綾】
まぁそんな説明することないと思うけど、図書はもっぱら本関係ね

【謙一】
図書室とか管理してんの?

【沙綾】
でしょうね。学外の活動があるかは調べてないから知らない

【奏】
烏丸パイセンとかそんな本に埋もれた生活してるんだからやればいいのに

【凪】
……私、本は好きじゃないの

【奏】
日々の生活が説得力を隈無く剥ぎ取ってる件

【凪】
本を読むなら委員でなくともできるわ

【謙一】
いやまぁそうだけどさ

【沙綾】
それでも図書委員を選ぶのは大体、本好きねー。あの場所の大きさ考えたら決して楽じゃないけど井澤くんはどう?

【謙一】
うーん……俺はマンガなら多少は読むが……
決して楽じゃないなら即決はしがたい。

【沙綾】
多分一番忙しいところねー

【奏】
この人達居ないと私たち生きていけないもんね譜已ちゃん!

【譜已】
う、うん。学食、お世話になってます

【謙一】
なるほど。学食とか作ってるところなんだな
つまり完全自炊型の俺には縁の無いところだな。

【沙綾】
食堂と売店は学生の人気スポットだからね。特にお昼時は熾烈だから、兎に角素早く動いてもらわないと騒動が起きる

【沙綾】
それもあって比較的ストイックな場所ね

【乃乃】
味はしっかりしてますねぇ。遊びが足りませんが

【謙一】
遊びとか要らんわ。佐伯は学食依存型か?

【乃乃】
利用希望の有無以前に、私は出禁に登録されています故

【謙一】
何をやった貴様

【乃乃】
学外だと、フード店とか矢張りそっち系のお仕事が集まりますね

【乃乃】
あと、イベントでお食事要素を入れたい時などにもお呼ばれされるようです

【沙綾】
クローズの更新タイミングは学期だけど、一回でも所属したら否が応でも料理スキル身につくわねぇ

【沙綾】
井澤くん、入ってみれば? 料理上手の男子はモテるわよー(←あくび)

【謙一】
俺はまずお前らで忙しないから嫌です

【謙一】
何か凄く学内オンリーみたいな雰囲気出てるんだけど、何これ?

【沙綾】
1年男子の多くはそういう先入観で入って残念な思いをしてたわねぇ

【沙綾】
体育館営業サポートね、一言だと

【奏】
実態を知っても、結局人気だったよねー体育

【譜已】
えっと、真理学園は、おっきい体育館を持ってるんですけど……

【謙一】
体育館……え、そんなのあったっけ?
まだまだ地理的にも知らないこと沢山なのは承知だけど、今のとこそんな施設見てないな。
でも体育館は学校に普通あるか……

【譜已】
「GAC」って施設があるんです……

【謙一】
アリーナ!?
いやねえよ普通!

【奏】
優海町にも一般利用OKってことでちょっと歩くところにありまーす

【沙綾】
南湘でも中々大きい体育館ってことで有名ねー

【奏】
そんなGACの管理とかやってまーす。暇な時間あったら体育館で遊んでてOKみたい

【沙綾】
いっつも上限設定オーバーするものねぇ

【謙一】
これまたエラくざっくりしてるなぁ
イメージすら難しいわ

【沙綾】
物資は学内外どっちも、運搬ね

【謙一】
ああ、なるほどそっち系か。力自慢の活躍場だな

【沙綾】
学校では、ゴミとか仕入れ食材とか、主に学寮で活躍ねー。基本的には業務フローが固定だから、それ通り落ち着いて取り組める

【沙綾】
学外もそう。要請自体はイレギュラーだけど、フローは要請側が組むから結局こっちのやることはやっぱりフロー通り

【沙綾】
極論頭空っぽでもできるってことね。逆に工夫し過ぎないことが大事

【奏】
たまにやる分には楽しいんだけどねー。何回もやりたいとは思わないなーアレ、変わり映え無いし

【謙一】
思っていた以上に本格的なんだなどれもこれも……
やっぱり凄え学校に来ちまったんだな俺……

【謙一】
で、最後のこれまたざっくりしてるのは何だ?

【沙綾】
まぁぶっちゃけフリーターみたいなもんね

【謙一】
無職……ってそうか! だからお前ら全員雑務志望なのか!

【乃乃】
雑務はその呼称通り、自由な身ですね

【乃乃】
これまでのクローズのように特定の業務の継続的な縛りを受けるのではなく、やりたいことをやり続けるとこです

【乃乃】
他のクローズに属さない場合、自動的に雑務扱いとなります

【沙綾】
まぁどこかのクローズが人員不足とかでヘルプ要請したり、逆に雑務から仕事探してみたり、フリーランスみたいな性格も持ってるわね

【沙綾】
それでも結局仕事を持つかどうか、どのように仕事を持つか、それらは私たちに委ねられてるというわけ

【沙綾】
学園曰く、自由を保持するスタンス、ということらしいわよー

【謙一】
てかそれなら皆雑務行っちゃうんじゃないの?

【奏】
ところがそうでもないんですよねー。そこがホント不思議です

【譜已】
真理学園では歴史深いシステムなので、多分そういうところで繋がりが絶えないんだと、思います

【譜已】
先輩の姿を見て、何となく続けている人も、多いのかも……

【奏】
それでも風紀は翠さん政権になって完璧に存在感薄れたけどねー……

【譜已】
それは…………うん…………
娘は遠い目をした。

【謙一】
なるほどな……何となくだが、分かってきたよ。ありがとう

【奏】
今のが通常委員の括りで他にもクローズはあるんだけど、まぁ全部私たちには関係無いねー
さて……

【謙一】
やっぱり皆は、全員雑務って感じなのか?

【奏】
イエス!

【凪】
だからそう云ってるでしょう

【乃乃】
揺るぎありません。私にも私のやることがあります(←皿に梅クリームパイを盛りながら)

【沙綾】
揺るぎないわねー。私基本的に暇だけど

【美甘】
…………

【情】
ごがー

【謙一】
これだけの解説が結局総て無駄になりそうだ
まぁ俺とて特変管理という仕事があるから雑務一択だな……
ホント何だったんだこの時間。

【沙綾】
あ、良いこと思いついた

【謙一】
ん? 何だいきなり

【謙一】
もしかしてフリー以外のクローズを――

【沙綾】
…………(笑顔)

【謙一】
――やるわけないわな遠嶋が
何でかよく分かんないけど笑顔が怖かった。

【奏】
んで、何思いついたんすか遠嶋パイセン?

【沙綾】
権力よ

【譜已】
け、権力……?

【沙綾】
ほらコレ
沙綾が黒板前の教卓の棚を漁りだした。
そうして手に取った一枚の紙を、教卓に叩きつける。
♥特変制度まとめ♥
①導入について
今年度より 3 年間、真理学園において特例クラス「特進選抜クラスA」(通称:特変)を 今年度A等部第一学年クラスとして導入することとする。特変は、他のクラスと立場の在り方が根本的に異なり、何事においても破格であることを示す存在である。よって自由を掲げる現真理学園は特変に対し、他クラスには無い権利を与える。
②特変の上格性
〇特変は真理学園の学校経営に干渉することを許される権利の程度を有し、学園所属の教員や他クラスの学生などは特変の権力行為に対して従うこととする。
③献上制度(Seize)
B等部およびA等部に所属する総ての学年・クラスは特変に対し、授業週間の週末 (土曜開校の場合は土曜日放課後に、そうでない場合は金曜日放課後)に必ず一つ「たいせつなもの」を献上しなければならない。なお、その献上は各教室に特変制度下の組織であるグリーンシャドウ隊の者が向かい、直接回収する形式を取る。献上するものはクラス内で決めてよいが、物質であることが前提条件である。これらに従わない場合は、学園側が調査した結果に基づいて対象と献上物を決定し、強制回収する。
④特変破り
B等部およびA等部に所属する総ての学生は次に定める「特変破り」を行う権利を有する。 これは特変に対し勝負を挑むことであり、これに勝利すれば後述する権利を与えられる。
⑤特変破り手続き
特変破りは、基本的に実行側と特変側の双方の合意と、学園への手続きが原則必要である。 後者については学園の教員に申請するなどして受け取った「特変破り実行申請用紙」に必要事項を記入し学園に提出する。申請用紙に記入すべき項目は、参加者数、全参加者氏名、希望日時、希望場所、双方合意のルールである。参加者数に上限は設けない。日時や場所については希望の通りとなるよう学園が働きかける。
⑥特変破り成功者の権利
上述した特変破りに勝利した場合、参加者が参加者数を上限として学園側に「野望(Award)」を申請することができる。願いの内容によっては申請者との合議や代案もあり得るが、申請された総ての願いの実現に学園は全力を尽くすこととする。
⑦特B導入について
特変制度のもと、特変同様に「特進選抜Bクラス」(通称:特B)を今年度A等部第一学 年クラスとして導入することとする。特Bは特変破りと最も制度的繋がりの深いクラスであり、以下にその詳細を記述するが、実質的には対特変的である。
⑧特Bの対特変性
特Bは学力に限らない能力や実績を学園が公認することで、所属することが可能になるクラスである。特変は、このクラスが申請した特変破りを拒否することができない。ルールに ついては学園側の審査を通すが、原則として申請の拒否や内容の改変を行ってはならない。特変破りに勝利した場合に与えられる権利については上記の通りである。
⑨特Bの更新
特Bのクラス構成は学期毎に「更新」を行う。原則として学園側は所属可能な全学生を審査するが、特Bへの所属希望のある学生はそれを学園に申請することができ、所属希望の学生に対してのみ学園より行う通知や企画なども予定されている。審査の結果、更新時期に特Bへ移動することのできる学生に対しては学園より通知し、希望を受け付ける(希望申請をした学生については可否いずれの場合も通知する)。更新の際の審査基準であるが、今年度 の時点でB等部に所属する全学生、A等部第一学年に所属する全学生 (特変を除く)。学園が非公開で設定した基準を満たす、能力や実績。なお、既に特Bに所属している学生も更新の対象であり、特Bからの離脱を学園が判断することもある。

【沙綾】
特変の権力を、使うの

【謙一】
は……?

【沙綾】
こういうめんどくさい決め事を今後持ってこさせない為に――

【沙綾】
特変の権力物言わせて私たち仕事無しってことルール化しちゃえばいいのよ!!
…………。
…………。
…………。

【乃乃】
!!!!!!

【奏】
!!?!?!?

【凪】
――!

【謙一】
いやお前らちょっと!?
何「その手があったか!!」みたいな顔してんの!?

【謙一】
完全に権力の乱用じゃねえか!!

【沙綾】
私使えるものは何でも使う主義だから

【謙一】
俺だってそうだしその主義否定する気はないけども!

【謙一】
ほら、支配しきれないモノに頼り過ぎると逆に振り回されるんだぞ!

【沙綾】
えー。いいじゃない、ちょっとだけなら

【謙一】
ちょっとだけなら、とか酒飲みお父さん信用できない言葉十選に入るからな!
クラス全部に配られた、この「特変ルール」なる紙。
要は俺が学園長より語られた「特変制度」の一般公開ver.なわけだが……当の特変な俺らはどう受け止めるべきなのか。
どうこのルールと付き合っていけばいいのか、これも熟考していかなきゃいけないだろって思ってたところにこの感情ダダ漏れの提案。
新学期早々爆睡のイビキ音で彩られたこの教室を揺るがす大きな事件に違いなかった。

【謙一】
初めて会った時は衒火の後だったから油断してたけど、やっぱお前とんでもない奴だわ……

【沙綾】
何事も経験。もしこの振りかざしが悪い結果を呼んだなら、戻せばいいだけでしょ

【沙綾】
糞の皆さんには「権力実行の試験です」って動機公開すれば

【謙一】
動機は全然違うんだけどな。具体的な内容から本音が並みに漏れ出てるけどな

【譜已】
(ナイアガラだと最早漏水ってレベルじゃないと思うけど……)